ASAKURA DISTILLERY

CASK MATURED Our dream,
our legacy
醸造家の夢、時を超えて現代に蘇る
第1章 Takamine’s dream

 私達の夢は彼の夢から始まりました。

 100年以上も昔。日本ウイスキーの父と呼ばれる竹鶴政孝がスコットランドに渡る30年以上も前に、アメリカの地でウイスキーを作ろうと夢見た一人の青年がいました。
彼の名は「高峰譲吉」博士。後に世界初のアドレナリンの抽出・結晶化によって知られる人物です。
母方の実家が日本酒蔵ということもあり、高峰博士は麹の可能性を見出していました。


 通常ウイスキーは「麦芽(モルト)」を糖化工程に使用して製造しますが、彼は麦芽の代わりに日本酒造りで用いられる「麹」を使ってウイスキーの製造を試みました。麹はデンプンを糖に分解する力において、麦芽よりも優れているためです。

Takamine’s patent

米国特許庁

「アルコール分を含む液体(モロミ)の製造方法」

 こちらは、高峰博士がアメリカ特許庁から1889年9月17日に取得した特許状を写したものです。特許状によると、高峰博士は麹を使用して造る蒸溜用のモロミ(アルコール発酵した蒸溜前の液体)の製造方法の特許を取得しています。記述されている製造方法からは日本酒の製造方法の影響を強く受けていることが伺えます。

 また驚くべきことに、アメリカで特許を取得する以前にイギリス、フランス、ベルギーでも同様の特許を取得していました。「麹で作るウイスキー」に対する博士の壮大な夢が見て取れます。

 しかしアメリカに渡って研究を続け、いざ本格的な製造に着手しようとすると、麹の圧倒的な糖化力によって麦芽が駆逐されることを恐れた現地の麦芽業界の猛反発を受けました。最終的に身の危険を感じた博士は、その夢を断念せざるをえませんでした。

第2章 The beginning of our dreams

 異国の地で博士が試みた「麹を用いたウイスキー製造」。博士の革新的な試みは、弊社8代目篠崎倫明の子供時代に、父である7代目篠崎博之から語り継がれていました。

 日本が生んだ偉人の夢。しかし夢は半ばのまま。 全てはこの革新的な「麹を用いたウイスキー」を現代に蘇らせ、この偉人、そしてプロダクトの凄さを現代日本、いや世界中の人に知ってほしいと思ったのが7代目と8代目の父と子の夢の始まりです。

 そしてこの夢を実現するべく、40年前、7代目篠崎博之が麦焼酎の製造を始めました。
高峰博士の特許状の中身を分析すると、「黄麹=yellowish powder」(61行目)を使用しているところを除けば、現代の麦焼酎の製造工程と共通しているところが多いことに気づきます。博士の夢を現代に蘇らせるためには、日本の酒税法上の焼酎(樽熟成麦焼酎)の技法を習得することが必要だ。7代目はそう考えたのです。

 長い時間をかけ、苦労して麦焼酎製造における基礎的な技術を習得したうえで、「麹を用いたウイスキー」の実現に向け、さらに様々な試みを始めました。今から30年前に麦焼酎の樽熟成を開始し、実際に熟成に関する知見を深めました。試行錯誤を重ね、25年前、ついに「樽熟成麦焼酎 千年の眠り」の販売を開始しました。「千年の眠り」は高峰博士の「麹で作るウイスキー」を現代に蘇らせるプロジェクトの基礎になった商品、 夢への第一歩です。

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第3章 The birth of Asakura

 日本の現行制度上、焼酎の色味には制限があります。そのため、長期の樽熟成を経て一定以上の色味を有するようになると、そのお酒を「焼酎」として販売することができません。ろ過するなどして色味を抑えれば「焼酎」として販売できるのですが、それではせっかくの風味も一緒に取り除かれてしまいます。

 せっかく樽熟成を経て素晴らしい香味の黄金色の液体を味わえるのに、お客様にはそれをお届けできない。忸怩たる思いがありました。そこで弊社では、ろ過を控え、香味色沢そのままに味わっていただけるよう、あえて焼酎とは名乗らない「リキュール」というカテゴリーを選択しました。

 「リキュール 朝倉」の誕生です。そして「麹を用いたウイスキー」の実現に、限りなく近づいた瞬間でもあります。

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第4章 Dreams come true.

 2021年春、ついに歴史的な日が訪れました。
 アメリカNY州にて、「Takamine Whiskey 8 Years Old」※として、アメリカで販売を開始致しました。その輪はどんどん拡がっており、現在アメリカ国内約15州のお酒専門店で販売されております。また同年、世界的に権威のある蒸溜酒の鑑評会「San Francisco World Spirits Competition 2021」でGold Medalを獲得することが出来ました。

 40年越しの父と子の夢、そして130年越しの博士の夢は、ここに結実しました。

※「Takamine Whiskey 8 Years Oldはアメリカ向けに特別に製造を行った、「リキュール 朝倉」とは異なった商品です。

第5章 Looking ahead…

 私たちの夢は終わりではありません。熟成した「朝倉」をシェリー樽やブランデー樽など異なる樽で追熟した新しい「朝倉」商品を発売したほか、バーテンダー様と協力して「朝倉」を使用したボトルドカクテルも開発いたしました。
 時を超えて博士から受け継いだ志は、いまもその灯を燈し続けています。